エティエンヌ・オルバック - Etienne Horbach -  [ ジュラ地方 アルボワ]

- 二番通り酒店 -

“エティエンヌ・オルバック

静かに時間を積み重ねる、誠実なワインづくり

アルボワの街中に、赤色の可愛らしい佇まいのブランジェリーがあります。1895年創業の老舗パン屋。普仏戦争の後、ドイツからアルボワへやってきて、このパン屋を開いたそうです。エティエンヌは、本来ならこのブランジェリーの6代目になるはずでした。しかし、弟二人がパンづくりの道へ進み、彼はワインづくりの道を選びます。父がパンを焼きながら畑仕事もしていたことが、そのきっかけだったそうです。「ワインとパンなんて最高だろ。フランスだからね」と笑って話してくれるエティエンヌ。その言葉どおり、彼にとってパンとワインは、ごく自然に隣り合う存在なのでしょう。2015年から2020年まで、同じアルボワにあるDomaine de la Touraizeでワインづくりを学び、その途中の2019年、自身のドメーヌを立ち上げました。醸造所は、パン屋から歩いてすぐの路地にある建物の地下。どんなに暑い日でも冷ややかで、ほどよい湿度を保つ美しい石造りの地下カーヴです。エティエンヌは、ワインの熟成期間をできる限り長くしたいとよく話してくれます。この低温のカーヴでは発酵がとてもゆっくり進み、その長い時間がワインに複雑で豊かなアロマを与えてくれるといいます。長い熟成には場所が必要になるので、もっと広い醸造所へ移りたいと思うこともあるそうです。それでも、まずはワインがゆっくりと発酵し、時間をかけて熟成していく、この環境を何より大切にしたいと語ってくれました。畑は2.5ha。家族が所有していた1.8haと、借りている0.7haからなります。植えられている品種のほとんどがシャルドネで、サヴァニャンが少し。5つの区画に分かれていて、すべてアルボワにあり、ビオディナミで管理されています。ジュラ地方にとって悲劇的な低収量となった2021年。わずかに残ったブドウを前に、エティエンヌは「どんなワインをつくりたいのか」を改めて考えたそうです。そして、その年をきっかけに、酸化防止剤を使わないワインづくりへ踏み出しました。2019年には1g/L、2020年には0.5g/L使用していましたが、丁寧な仕事を積み重ね、時間をかければ、酸化防止剤を使わない、伸びやかなワインがつくれる。そんなワインをつくりたいと思ったそうです。熟成期間だけでなく、瓶詰のタイミングにも強いこだわりがあります。月の動き、その日の気温、そして液体そのものと向き合いながら、最適な時を待ちます。その結果生まれるワインには、オルバックならではの風味がある気がします。美しいミネラルとともに、まるであの地下カーヴの湿度まで閉じ込めたような味わい。美味しいパン屋に、その店ならではの味があるように、オルバックにも、オルバックだけの味があるような。エティエンヌは、とにかく誠実な人です。そして、丁寧な仕事を積み重ねることを何より大切にしています。時間や空間がワインにもたらす力を信じ、その中で静かに、迷いなく決断していく人。その姿勢が、そのままワインに表れているように思います。また追いかけたいと思える生産者に出会いました。

[ 戻る ]