サンズ・オブ・ワイン - Sons of Wine -  [ アルザス地方 アンマーシュヴィア ]

   

“サンズ・オブ・ワイン

長年にわたりヴァンナチュールの普及に貢献してきたファリッドが自身でつくる念願のワイン

淡々と話す姿が真面目そうに見えて、随所に冗談を織り交ぜて人を笑わせては、してやったり顔の笑顔になる可愛らしい性格のファリッド・ヤイミ。ナチュラルワインが好きな従兄弟のキャロルと一緒に2005年にヴァンナチュールの協会l’Association des Vins Naturels(AVN)を設立しました。フランスでのヴァンナチュールの認知に大きな力を注いできた人です。この協会はマルセル・ラピエールやクリスチャン・ビネール、ピエール・オヴェルノワなど最初は10人に満たない、今では多くの人に尊敬されるつくり手たちが先頭に立って築き上げてきた組織です。ファリッドは自身の仕事をしつつ協会の運営に尽力し、それとは別に自宅のガレージで少量ですがワインをつくったりしていました。AVNは2012年頃が60生産者ほどが加入し一番盛り上がっていたそうです。ただその頃からよりナチュラルワインを追求する人が、これはナチュラルワインじゃないと否定的な意見を持つ人たちも増えてきて、すべてのナチュラルワインを肯定的に楽しみたいファリッドは2013年で協会を離れます。2016年にクリスチャン・ビネールが新しいカーヴを建てたことで、クリスチャンの古いカーヴを貸してもらいネゴシアンとしてワインつくりを始めます。アルザスの有機でブドウを栽培する生産者たちが彼を信頼しブドウを託しくれました。長年ナチュラルワインの広がりのため貢献をしてきたファリッドの人望の厚さが伺えます。現在いろんな生産者からブドウを売るよという話もあるそうですが、信頼する生産者の同じ畑、同じ区画のブドウと向き合いたいと断っているそうです。預けられたブドウのポテンシャルを大切に、ピュアなワインをつくりたいとファリッド。2017年から2019年までクリスチャンの元で醸造をして、2020年は自分のカーヴを手に入れました。彼はプレス機の1barの優しい力で一晩中ゆっくり搾ったジュースのみでそれぞれのキュヴェをつくります。パートナーで同じくワインつくりをするヴァネッサが贅沢すぎると苦笑いするほど。その後に力をかけてプレスしたジュースはすべて"Vin de Messe"というキュヴェにアッサンブラージュされます。ナチュラルワインに出会った時の新鮮な感覚をいまなお追い求める彼は、海に樽を沈めてワインを熟成させたり、2,000km以上も旅をしながらスペインまでブドウを収穫に行ったり、まるで第二の青春のように、自由にユニークにワインつくりを楽しんでいます。2019年には念願だった自身の畑をアルザスの西側、ローレーヌ地方に0.8ha購入。2021年にはさらに同じ場所に4.5haを購入しました。現在アルザスには15000haの畑がありますが、ローレーヌ地方はフィロキセラの前は40000haの畑があったそうです。この地方は鉱山などもありフィロキセラの後は多くの畑が手放され工業地帯になった歴史があります。もともとワインつくりに適した土地で、温暖化の中でシャンパーニュなども暖かくなってきていて、この地方の大きな可能性を感じているとファリッド。自身のドメーヌはサンズ・オブ・ワインとは別の名前「Domaine de La légèreté」と名付けられました。légèretéは乗馬で使われる概念で「管理しすぎず、信頼し、そのままを大切にする」そんな馬との信頼関係がブドウと自分との関係に近いんんだとファリッド。彼はいつもどこかに出かける時、携帯型のBOSEのアンプを常に持って歩くほど音楽好き。私たちもファリッドと過ごす時間を思い出すと、彼のゆるい冗談と笑顔、それと常に傍に音楽が流れてきます。そんな彼の肩の力がふっと抜けた生き方がワインにも表れているようです。長年ナチュラルワインと向き合い貢献してきたファリッドが自身でつくる念願のワイン。ファリッドとワインを飲み交わすと、彼のナチュラルワインが大好きな想いをおもいきり感じられます。好きじゃないとつくれない...ファリッドのピュアでいてほんのりロックなワインをぜひ味わってみてください。

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