サヴォワの土着品種とモラス土壌からもたらせれるミネラルと旨味、自然そのままに
カーヴの裏にそびえる切り立った山Gros Foug(グロ・フグ)の南西向斜面に広がる美しい畑。氷河期に形成されたモラスと呼ばれる砂岩と石灰質がセメントのようになった固い土壌。これが溶解し石英の砂になり濾過性が高く乾燥に強いブドウに適した土壌になります。このモラス土壌はブドウの根が張るのがとても大変ですが、液体に燻したような香りや野生的なニュアンス、スパイシーさや力強さと複雑味をワインに与えてくれるそうです。コランタン・ウイヨンはこの美しい畑と土壌に惚れ込み、2020年に畑を所有していたドメーヌ・ドゥ・ヴェロネから5haの畑とカーヴを買い取りました。急な斜面の一枚畑は10haほどありましたが、自分の手の届く範囲でワインをつくりたいと5haのみにしぼり、購入したカーヴに残っていた大きなタンクも売って、小さいタンクだけを残しました。古い歴史を持つドメーヌのカーヴはその昔すぐそばにあるChâteau de Fortisの付属施設だったもので1940年に建てられ、いまもその歴史の名残を感じられます。畑には赤と白品種合わせて5品種が植えられています。カーヴの裏に広がる畑で収穫したブドウをすぐカーヴに運び込み醸造できるのも彼にとっては理想的だったようです。切り立った山の麓の急な斜面、冷涼な気候、土着品種、まさにサヴォワで生まれるワイン。「モラス土壌で個性を発揮するそれぞれが品種を自然なまま瓶に詰めたい。収穫したブドウが時にロックな味わいになろうとも自然なままに、こうしたいとかこう持っていこうとかしたり、自分に迷いがあるとワインにも迷いが伝わるんだ。」とコランタン。ウイヨンと聞いてピンと来る人もいるかもしれませんが、コランタン・ウイヨンの祖母はエマニュエル・ウイヨンの母親で、エマニュエルはコランタンの叔父にあたります。幼い頃からピエール・オヴェルノワの畑に行き、ワインの剪定や収穫、醸造、そしてパンつくりなどに出会い、自然へのリスペクトのある仕事、情熱や感性を得て育ってきました。その後、ボーヌやモンペリエでワインつくりを学び、ステファン・ティソやドミニク・デュランで働き、叔母にあたるアデリーヌ(ルノー・ブリュイエールの奥さん)で収穫などに携わります。オーストラリアやスイスのワイナリーでも研鑽を積み、最後にこのサヴォワの地に辿り着いたのは、この土地への魅力はもちろんですが、奥さんがサヴォワ出身であることも影響しています。奥さんのリーヌとは2015年から2018年までスイスのDomaine la Ville de Morgesで働いていた時に出会いました。コランタンはバニュルスのブリュノ・デュシェンのようなパッと晴れやかな陽気さのある人柄。訪問中も笑いがたえません。特徴的なエチケットも彼らしい哲学があります。「旗にはいつだって大切なメッセージが込められているだろう。自分で書いたエチケットで手作り感はあるけど、これはコランタン・ウイヨンがつくったワインだって見た人がすぐに分かるようにしたかったんだ。そして四方にあるシンボルは星の動きを表しているんだ。」とコランタン。自然や風土、ワインが瓶に詰められるまでの多種多様な事象へのリスペクト、それに対しての彼自身がすべきことへの深い考慮がなされているのを彼の仕事から感じます。グロ・フグの麓から届けられるナチュラルなテロワールを感じてほしいです。
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