ドメーヌ・ドゥ・ラ・トゥルネル - Domaine de la Tournelle -  [ ジュラ地方 アルボワ ]

   

“ドメーヌ・ドゥ・ラ・トゥルネル

力強く、エレガンス。二人三脚で歩んで来たパスカルとエヴリンヌの人柄のよう。

フランス各地のサロン(試飲会)に彼らが出ていると、会場内で彼らのワインの美味しさが口コミで広がりすぐに人だかりができます。話しかけるのが困難なほどです。見事な逆三角形の体格をしたパスカル、そして彼を支え一緒にワインを造る優しく穏やかな奥さんのエヴリンヌ。二人はワインを通じて1996年にローヌ地方のシラーのブドウ畑で出会いました。パスカルはすでに1991年からジュラでワインを造り始めていて、エヴリンヌはミリデューやイディオムなどの病気を解析して生産者に助言する仕事をしていました。パスカルの両親はジュラのモンマランという静かな村で牛を育ててコンテを造っていました。そのモンマランに1994年から自分でブドウを植樹し始めます。彼らのドメーヌの骨幹となるブドウ畑です。2000年からエヴリンヌもジュラに引っ越し二人三脚でのワイン造りが始まります。造り始めた当初はクラシカルな造りをしていたそうですが、自然環境や食への意識が高かかった二人は、畑仕事においても醸造においても早くから自然な造りへと移行していきます。二人は常々「私たちは買いブドウはしない、自分たちで育てたブドウで造られたワインを届けたい」言います。ここ数年では異常気象でフランス全土で低収量が続き買いブドウを増やす生産者が多い中で、シンプルに見えて非常に難しいことです。さらに彼らの畑のほとんどが彼らが一から植えたブドウ畑になります。植樹してから安定した収穫までは時間がかかります。1994年から少しずつ植樹を続けてきた結果、彼らのワインは「彼らが植えて育てた彼らのドメーヌのワイン」すなわちトゥルネルのワインです。この決して簡単ではない長年かけて培ってきた彼らの仕事は、いまフランスの多くの生産者からも改めてトゥルネルのワインが再評価され若い生産者にも大きな影響を与えています。雨が少なくアルコール度数が上がりリッチなワインになりやすい年でも、彼らの育てたブドウは地中深くに根差し、しっかりミネラルを吸収し、きれいな酸とミネラルが液体にしっかり表現されています。「難しい年ほど日々の畑仕事の結果が出る」とパスカルは言います。長年、誠実に着実にワイン造りに取り組んできた二人。2008年に植樹したキュル・デュ・ブレイという区画に植えられたのはジュラの固有品種トゥルソー、シャルドネにジュラ古代品種のプティ・べクラン、そしてシラー。二人がローヌ地方のシラーの畑の中で初めて出会ったからだそうです。エヴリンヌはいつもワインにはエモーション《揺さぶるような感情・感動》が大切だと言います。私たちはその言葉が大好きで、トゥルネルのワインにはいつも二人のエモーションを感じます。サロン中どんなに人だかりが出来ても慌てずクールに対応するパスカル。畑に出る時は装甲車のような車に、スコップや鍬を無造作に積み込んで、まるで戦場に行くかのようなたくましさ。男らしく一本気、そして大きな包容力のあるパスカルはフランスの名だたるカーヴィストやレストラターも尊敬される存在です。エヴリンヌはいつも穏やかで母性にあふれ、彼女もまた大きな包容力に溢れています。力強さとエレガンスさが共存した素晴らしいワイン。まるでパスカルとエヴリンヌ、二人そのもののようです。

2021年の春にパスカルが亡くなりました。あまりに突然の出来事に私たちもショックでした。亡くなって少ししてから夏に私たちも訪問させてもらい、エヴリンヌはワイン造りを続けると涙ながらに話してくれましたが、その日がパスカルが亡くなって初めてカーヴに入るほど憔悴していました。醸造はパスカルとともにエヴリンヌも携わってきましたが、畑仕事はパスカルは男性二人分の仕事をこなすほど強く逞しい人でした。その穴を埋めるのは容易ではなく、続けてくれると話してくれて私たちも嬉しくて、その言葉を信じてはいたもののやはり少しの不安もありました。2021年は考えられないほどの雨で収量が激減し、収穫できるブドウがほとんどありませんでしたが、エヴリンヌはかえってよかったと言っていました。少し休めると。その後、わずかばかりの2021年の収穫を終え、冬の剪定を終え、春からの畑仕事もこなしもう2022年の収穫も終えることができた時に私たちもトゥルネルが続いてくれてると感じて心から嬉しかったです。約9haある畑は女性一人では大変だから少し手放すようにと周りからの助言もあったそうですが、どの畑もパスカルと二人で大切に育てた子供のような畑だから手放すことはできないとすべてそのままにしました。エヴリンヌは本当に強い女性です。つい先日の訪問でこれからの話をした時にエヴリンヌは「パスカルがいた頃とワイン造りの哲学は一切変わらない。ただ今年も暑く乾燥し毎年続く異常気象にしっかり適応していかなくてはいけない。ハイブリット品種を植える生産者も増えてきているけど、私たちはジュラだからこそ造れる人々を感動させるエモーションのあるワインを造りたい。」そう話してくれました。エヴリンヌの目はしっかり未来をみていて、ドメーヌ・ドゥ・ラ・トゥルネルはしっかり前に進んでいるんだなとグッと胸が熱くなりました。私たちも一緒に力強く前進していきたいと思います。

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